河合拓氏のOUTLOOK運用法

再開時に予告していた内容です。お待たせしました。

FRIという団体があります。私は5年ほど前からWatchしつづけているのですが、この団体を主宰していた河合拓さんの発行するメルマガ、個人的に大ファンなのです。河合さんのメルマガの言葉は、ここ数年、いつも私の心の糧になってきました。
http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/09/P0000975.html

さて、その河合さんより、この前お会いしたときに、許可をもらったので、私がGTD的な管理法をスタートするきっかけとなった河合さんのメルマガ101号を全文掲載したいと思います。(ちなみに、河合拓氏がGTDをご存知かどうかはわかりません。河合拓氏の方法はGTDに100%沿っているわけではありませんが、たくさんの類似点があると感じました)


ちなみに河合拓氏のブログは以下です。
http://blogs.yahoo.co.jp/kawait_2000


平成17年5月28日
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              FRI Magazine 【百十一】   
FRI Magazineは、NPO法人FRI&Associates代表 河合による、独自の視点で世の中を鋭
く切り込むソリューションメルマガです。私と一緒に、世の中の事象の裏にあるメカ
ニズムを解明し、本質に近づくための手法、考え方、視点を養っていただければと思
います。
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メールをつかった仕事術

 昨今、インターネットを使った仕事の方法がスタンダードになり、Eメール無しでは
仕事はできない状況になっている。私も4つのアドレスを持っており、一日に受けるメー
ルの量は100を超える。しかし、私は、それらのすべてのメールに目を通し、かつ、指
示されたことに漏れはないし、部下に指示をするときもきっちり管理している。一方、
こんな当たり前のことがなかなかできていないのも実情ではないか? 最近、他人のパ
ソコンをのぞく機会があって、いろいろ考えることがあったので、今日はメールを使っ
た仕事術に関して述べたい。

【仕事が出来ない人間はメールを見ればすぐわかる】
 先日のことだった。部下のメールボックスを見て驚いた。受信ボックスに500の未読
メッセージが、分類フォルダーにも数百の未読メッセージが放置されていたのである。
「おまえ、大丈夫なのか?」と聞いたところ。「ええ、このソフトはメールを読んでも
黒文字が直らない設定にしてあるんです」などと、「間抜けな答え」(設定の話を聞い
ているのではなく、そんな管理のやり方で大丈夫なのか、と聞いている) が帰ってき
た。私は、「仕事のやり方がおかしいぞ」と指摘したのだが、私が何を言っているのか
理解できなかったようだ。

 さて、実は、現実に、彼は仕事ができない。指示をしてもスピードが遅い、言って
もやり忘れることが多い。そういうだらしなさが、メールの管理にハッキリと現れて
いるのだ。未読と既読をフォルダーに分類しているなら、受信トレー(フォルダーに分
けられる前の状態)に500以上の未読メールが溜まるはずがない。つまり、このような、
管理をやったことがないし、誰も教えてくれないから、自己流でやっているのである。

 試しに、彼に別のプロジェクトの作業ステップを書かせたところ、作業、成果物、
プロセスがごちゃごちゃになっていた。つまり、業務の構造化と分類ができないので
ある。私は、仕事を効率的に進めていく上でロジカルシンキングが欠かせないと述べ
てきたが、特に、MECEに構造分解する力が今のビジネスマンには圧倒的に不足してい
る。彼は、このような構造化、階層化が苦手なのだ。こういう人の特徴は、とにかく、
言っていることが分かりぬくいということがある。そもそも、頭の中で、自分の考え
方に意味的なつながりを持たせ構造化しているということができていないため、話が
飛んだり、言葉の使い方が正しくなかったりするのだ。昔から、どうも喋っているこ
とがよく分からないな、と思っていたのだが、メール見てよく分かった。論理力とい
うか、基礎的なスキルが足りていないのである。

 こういう人が、リーダーをやるとまわりが混乱する。的確な指示ができない、いろ
んなことが思いつきになって、チーム全体の生産性が下がるのだ。メール一つ見ても、
これだけのことが分かるのである。

【メールとファイリングの関係】
 私はファイリングの鬼だ。商社時代にファイリングと書類の分類は課長に徹底的に
教育された。当時、ITはまだ浸透しておらず、SKU(最小在庫管理単位)で、100,000個
を超える在庫管理、毎月1,000件近い債権滞留管理をマニュアルで処理していた。ファ
イリングができなければ仕事にならなかったのだ。

 余談だが、ファイリングの得意な人に仕事の出来ない人はいない。なぜなら、業務
の効率化とファイリングのセンスはきわめて似ているからである。ファイリングがう
まい人は、仕事をやらせても無駄を一切しない。何からやれば最も効率的か、まず考
えて手を動かすからだ。これに対して、仕事のできない人ほど何も考えず、場当たり
的に作業をし始める。全ては思いつきなのだ。

 例えば、あなたの近くにいる人に、「ほらほら、4月に受けた研修資料、あれ見せて
よ!」なんて、曖昧な問いかけをしてみてもらいたい。あなたの友人が資料を探し始め
たら時計を見ておこう。1年以内の資料であれば、1分以内であれば合格、3分かかる人
は仕事の仕方に何らかの問題がある。5分かかってもうろうろしている人はアウトだ。
こういう人は、仕事のやり方を根本的に直さないと、30前までにリストラの餌食にな
る可能性が高い。

ちなみに、私は商社時代、一年に単価20ドルの羊毛を500万ドルぐらい売っていた。そ
の数(SKU)は数千を越え、さらに、仕向国(輸出先)や仕入れ先、出荷先や支払先が複雑
に入り組んでいたため、そのパターンは数万件にも及んでいた。

 しかし、課長に突然、「先月頼んだ、オンワード樫山向けの生地糸3トンはどうなっ
ている?」と聞かれても、30秒以内に、該当する資料を取り出して、「出荷予定は明後日
ですが、すでにイタリアを出向し、北京に着いています」などと、答えることが出来て
いた。これは、私が徹底的に業務内容を分析し、作業を部下の女性に振り分け、仕事
の標準化とファイリングを行っていたからだ。当時、ITやパソコンは一切なかったの
で、これらの管理はすべて紙でやっていたのだが、ファイリングの工夫さえ徹底すれ
ば数万ぐらいの案件でも数十秒で検索することができる。仕事のできない人ほど、IT
だなんだと「手法」ばかりに目を向けるが、仕事の仕組みを工夫するだけで生産性は5倍
以上にあがっていく。逆に言えば、これぐらいソリッドな効率化をマニュアルででき
ない人間にITなど使いこなせないということであろう。余談だが、会計系のファーム
にはITコンサルなどと言って、クライアントにITのコンサルテーションを行っている
人間が多いが、彼らのファイルを見ると大きなバインダーに全ての資料をぶち込んで
いるだけ、ということが多い。こんな連中を見ていると、よくこれで「コンサルタン
ト」などと言えるな、とあきれることがある。

【河合式メール仕事術】
 それでは、実際に私が行っているメールを使った仕事術を公開したい。ここに書か
れていることはあまりに基本的なことだが、意外にできていない人が多い。ご自身で
チェックしてみて、明日からでも使ってもらいたい。

1.メールは必ず自分で終わる
 仕事の出来ない人間ほど、メールの返事が遅い割に、漸く来たメールはだらだら長
い。仕事が出来る人は、短いが、平均一時間以内、早い場合は数分で返事が返ってく
る。私が商社時代に上司から言われたのは、「絶対にメールは相手で終わらせるな。自
分で終わらせろ。」である。例えば、ある人から「今月末までに、企画書を上げてく
れ」などと仕事の依頼が来たとする。その場合でも、必ず、「了解しました」とか「分か
りました」などという返事を送るのである。もし、指示などではないメール、例えば、
上司から状況の報告などがメールで流れてきた場合でも、「お忙しい中、ご報告ありが
とうございました」などと、謝辞を述べて、メールをこちらで終了する。短い文でもか
まわないから、(むしろ、短い文章の方がよい)かならず、こちらからメールを出して
終わる、ということを心がければ、あなたの信頼感はぐっとあがるだろう。

 これは、説明するのが難しいが、逆に、そういうメールを自分が受け取ったら分か
るだろう。きわめてリズムがよく安心感を感じるのだ。仕事の出来ない人ほど、だら
だら長文を送って、最後は相手にメールを書かせて知らん顔だ。短い文章をテンポ良
く流して、最後のメールはこちらで終わるというルールを徹底してもらいたい。

2.メールの返事は一時間以内
 私と仕事をしたことがある人は分かると思うが、私のメールのレスポンスはきわめ
て早い。おそらく、通常で一時間以内、どんなに遅くても当日には必ずメールが帰っ
てくる。ここで、仕事ができない人間ほど、3日、1週間と、だらだらメールを遅らせ、
最後は忘れるというパターンが多いのだ。レスポンスが早い人は、相手にものすごい
信頼を与えることが出来る。このスピードをぜひマスターしてもらいたい。

3.ITを徹底的に使いこなし、受信フォルダーを空にして帰れ
 それでは、私のメールソフトの活用方法を伝授する。まず、メールが受信フォルダー
にたまる。スパムメールは内容を一切読まず、ずばずば削除し、可能な限り、件名、
送信元などを登録してゴミ箱直行ルールを作っておく。

 残ったメールを上から一つ一つ目を通し、情報伝達のもので内容が大事なものは、
アウトルックのメモにコピーし、大事でないものはそのままフォルダーに待避させる。
また、そのメールを読んで、返事が必要なものは、当日以内に返事ができるものはほっ
ておき、当日以降になるものは、その場で返事をして「何日までに処理します」と返し、
メールはアウトルックのTO-DOにコピーし、期限を設定しておく。

 逆に私からの指示が必要なもので、相手の完了報告を確認しなければならないもの
は、大事なものはTO-DOにコピーし、誰それの作業完了確認と書いておき、上記同様、
期限を設定しておく。それほど大事ではないものは、受信トレーに残しておく。当然、
相手から完了報告が帰ってきたら、その完了報告と一緒にフォルダーに待避させるわ
けだ。相手の完了報告がずるずる遅れると、ずっと受信フォルダーにメールが残って
いるので、そのメールを読んで定期的に部下にプッシュを入れる。「こら!そろそろで
きたか!さぼるんじゃないぞ」というわけだ。会議のミーティングなどの通知は、アウ
トルックのスケジューラーにコピーし、終了したらフォルダーに移動させる。こうい
うことをひたすら繰り返し、受信トレーにたまったメールは30分以内に空にする。

 賢明な読者はもうおわかりだと思うが、私が仕事を終了する時は、「受信フォルダー
のメールが無くなったとき」なのである。逆に言えば、受信フォルダーにメールが残っ
ている時は、絶対に家に帰らない。どうしても、やり残す場合は、アウトルック
のTO-DOにメールをコピーして、翌朝パソコンが開いた瞬間、直ぐにアラームを出させ
るという設置をして帰る。だから、私は指示されたことを忘れたり、やり残したこと
は一切無いし、部下の怠慢も直ぐに見破ることが出来るのだ。

 ここまで読んで、なんだ当たり前じゃないか、と思われた人。逆に聞くが、あなた
は、それを「実際に実行」しているか?私は、これまで何人ものビジネスマンと会ってき
たが、こんな当たり前のことをきちんとやっている人にお目にかかったことがない。
みんな、だらだらなんとなく、受信トレーに300も500もメールがたまっており、なん
となく分類したフォルダーにメールを待避させ、仕事をした気になっているだけなの
だ。仕事の仕方に虎の巻はない。真実は最もシンプルなものなのである。当たり前の
ことを当たり前にする。こういうシンプルな管理をキッチリと行って明日の仕事に活
用してもらいたい。